ノアの箱舟を創ろう Let us Create the Super Ocean-Floating-Structures such as the Noah's ark.

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Saturday, January 30, 2010

【伊賀のオオサンショウウオを守る会】:第1回勉強会における意見交換 講義テーマ「オオサンショウウオの生態と保全上の課題」

下記の【伊賀のオオサンショウウオを守る会】の第一回の勉強会が 2010年1月30日(土)PM1時30分

三重県伊賀市阿保の青山公民館で開かれます。参加自由です。 参加費500円

どしどし参加してください。 問い合わせ先:TEL.090.2115.1507 (川上)

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1001301回勉強会における意見交換
講義テーマオオサンショウウオの生態と保全上の課題」
※以下の青字部分は、田口さんの博士論文 「オオサンショウウオの生息地評価と保全計画」からの抜き書きまたはその要旨、(  )は論文のページ

勉強会の企画趣旨:(ひとまずダム建設問題を除いて・・・)一般にあまり知られていない「生物種としてのオオサンショウウオとその生態」について学んでから、その保全策として田口講師がどのような方策が有効と考えていらっしゃるのかについてお話を伺い、意見交換したい。

1.生物学を学んで来られた田口さんが、特にオオサンショウウオを研究対象として選ばれた理由は?

2.保全生物学とは?
 ・第1の目標~遺伝子、種、生物群集、生態系など複数のレベル(階層性)からなる生物多様性の急速な減少の現状を把握し、その現象の原因となっている人間活動を明らかにすること。
 ・第2の目標~絶滅危惧種や悪化した生態系を回復するための解決策を提案し、実践すること。
 ・生態学~生物の分布と密度を規定している、生物と環境との相互作用を解明する科学

3.なぜ、「生物の保全は人類の緊急の課題」(P13下段)なのですか?

4.オオサンショウウオの生命力
オオサンショウウオは、3,4億年前に登場し、3,4千万年前からほとんどその形態を変えていないと言われます。地球の歴史を調べると地殻変動、温暖期や寒冷期(氷河期)など激しい環境の変化が繰り返されてきたようですが、オオサンショウウオはどのように生命を繋いで来たのでしょうか?

5.世界各地に分布・生息するオオサンショウウオの種と近隣のオオサンショウウオとの関係、とくに中国オオサンショウウオとの関係

6.オオサンショウウオの生息環境、生息条件
 ・オオサンショウウオの生息地評価の意義
 ・オオサンショウウオの生息を妨げる要因
 ・存続可能場所と存続不能(絶滅危惧)場所
 ・河川改修
・生息地の連続性~河川構造物(堰、ダム)による生息域の分断
 ・止水繁殖性両生類の移動は、性成熟した成体が行う「繁殖期の水域と非繁殖期の生息場所との往復運動」である。(P21中段)
 ・移動に影響を与える要因(一般化加法モデル)
  ・目的変数:移動距離
  ・説明変数:(1)時期、(2)再捕間隔、(3)放逐地点、(4)全長 
 ・分断によって繁殖行動が阻害されると、繁殖場所にたどり着けず繁殖に失敗するという直接的な弊害や、小集団化による遺伝的劣化という間接的な弊害が引き起こされる。(P18下段)
・繁殖期の移動は何によって誘発されるのか?水温変化、フェロモン、その他? 
・遡上・降下が可能な堰の構造、魚道の考え方や設計技術との違い
小さな自然再生として可能な対策:ミチゲーション?
・潜在的な生息適地の推定の意義
・オオサンショウウオは源流域での発見例が少なく、勾配の緩やかな中流域で多く発見されていることが明らかとなった。(P88上)

・近年にオオサンショウウオが発見されなくなった場所で、有意に護岸率が高かった。ただし、護岸がなされていても川岸に土砂が堆積した後に流水で削られ、隠れ場所となる窪みができる可能性があるため、一概に護岸率だけで隠れ場所の有無を議論できない部分もある。

・オオサンショウウオのように寿命の長い生物では環境変化の影響を検出しにくく、世代更新が途切れていても、それが表面化するまでに時間がかかる。(P89上段)

・オオサンショウウオは幼生や幼体など小さな個体を直接発見することは困難である。
(P89上段)

・生態系の劣化という危急の課題に対しては、十分な科学的解明を待ってから回答を出していては手遅れになる場合があり、順応的管理を行いながら、利用可能な情報源をもとにして可能な限り早急に保全を行っていく必要がある。(P89中段)

・近年の生息適地推定は非生物要因をもとに解析を行う例が多いが、保全すべき種の餌資源など、生物要因のデータベースを用いて再解析を行うことができれば、より現実に近い適地推定を行うことができる。(P89下段)

・近年に個体が見つかっている地点を、過去に見つかった地点よりも先に保全すべきである。(P90上段)

7.保全計画・遺伝的多様性
・保全計画を策定する際には、移動力と関係して、種の遺伝的多様性を考慮することが求められる。
・一般的に、遺伝的交流のない地域ごとの個体群間では同じ種であっても、それぞれ特有の遺伝情報をもつ。これら種内の遺伝的多様性が高いほど、将来起こりうる環境変化に対して、種の存続に有利に働くことになる。
・逆に小さな個体群で遺伝的変異が失われると、新たな条件に対応する能力が限定されるとともに、汚染、新しい病気、地球規模の環境変動など長期にわたる環境変化に対する適応力が弱められてしまう。(P105下段)
・よって効果的な保全計画を立てるためには、種の移動力を考慮するとともに、遺伝的多様性を考慮した生息地の保全を行っていくことが必要である。(P106上段)


8.オオサンショウウオと人との関係(あり方)、人と自然のより良い関係?共生?保全?
・生物の保全は人類の緊急の課題
・種を保全する意義と生物多様性
・生物多様性保全の4つの目標

9.予防原則について

10.私たちはオオサンヨウウオを守るために何ができるか

11.今後の研究課題
・今後は詳細スケールでオオサンショウウオの生息環境を明らかにする必要がある。
P104下段)

・広域スケールでオオサンショウウオの生息に堰密度、護岸率、河床勾配、電気伝導度が関係していることを示した。堰密度については、移動と野関係から、本種の存続に関わるプロセスを説明することはできるが、他の要因についてはこれまでほとんど報告がない。護岸率や河床勾配は本種の昼間の隠れ場所や繁殖巣穴との関係から、電気伝導度は幼生における水質への耐性から説明が可能になると想定される。これらの生息環境を明らかにすることで、同様の生息環境を必要とする本種以外の種と本種との関係性を考察することができる。つまり河川生態系の保全に関する示唆を得ることができる。(P104下段)

12.<田口⇔川上とのメールやりとり>  ※オサンショウウオ通信創刊号所載

<川上> 
・「先住者、移住者ともに減少し、絶滅に向けて突き進む」は、清水善吉さんのご講演の内容、および、だいぶ以前に読んだ、生物学か生態学の文献に、動物種の多くが「その生存数500個体を割り込むと急速に絶滅に向かう」と述べられていたことから記述しました。(このことについて記述した文献を探したのですが、すぐには出てきそうにありません。)
・下流のダム淡水域(前深瀬川及び川上川)に生息している約200個体を、両河川の上流域において一定密度で安定して生息する合計約700個体群の生息域に移転・放流するという行為は、人為的に巣穴、餌、異性などをめぐる闘争により安定した生存環境から一転して弱肉強食環境への変化を招き、少なくとも200+700=900の安定した生息環境を形成するとは考えにくいと思います。この結果、うまくいっても200+700=700。
・そして、ダムという巨大な河川構造物によって河川縦断方向の連続性が断たれることから、上下流の遺伝的交流が断たれることによって遺伝的劣化が起こり、さらに減少して行く、また、餌となる魚などにも連続性遮断の影響は避けられない。このような要因から数十年~数百年のスパンでみると絶滅への道を辿るであろうと推測されます。

<田口>
・「生存数500個体を割り込むと急速に絶滅に向かう」というのは、保全生物学(保全生態学)の教科書に出てくる内容ですね。例えば、プリマック・小堀(2008)「保全生物学のすすめ」※3や鷲谷・矢原(1996)保全生態学入門※4などがその教科書としてあげられます。ただ、この500個体というのもあくまで概算値ですので、それぞれ異なった生態をもっている種ごとに、その値は変わってくるので総合的な評価が必要です。
・個体を移動させることによる悪影響は程度の差こそあれ、確実にあると思います。ただし、生物の保全にとって大切なことは、10ではなく、影響がありそうな場合に、いかにベターな選択肢を考えうるかだと考えています。
・ダムを作らないのが最も理想的ですが、どうしても作らなければならないとなったときに、より影響の少ない方法を提案することが大切です。
・ダムで沈む水域に生息するオオサンショウウオの対処法について、すぐに考えうる選択肢は、
A)200
個体を上下流へ移動させる
B)200
個体を放置する
C)200
個体を飼育する
・それぞれの選択肢における考えられる結果は長くなりそうですので今回は割愛しますが、ぼくは上下流への移動を確保(分断を解消)したうえで、Bの選択肢をとるのがベターではないかと考えております。

13.<地元専門家某氏の意見>
・保護対策に関しては、それぞれの河川での生息域の状況で異なり、現時点での知見では人工巣穴がベターではあるが、それを繁殖地以外に設置することは論外である。浮石(隠れ家)の存在など本来の生息環境の復元と総合的な対処方法を検討すべきと思うが、いずれにせよ個体を元の生息域から移転させるというのは良くない。
・現状で生息していないところはそれなりの理由があることで、その理由をクリアーしないと移転も成功しない。河川の生産量とオオサンショウウオの生息数の関係もまだまだ解明できていないし、現在の良好な生息環境を移転により悪化させてしまうのは最悪である。

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